「旅行業」は誰でも開業できるわけではありません。
旅行業を営むにはいくつかの要件があり、それを満たしている必要があります。
実際にどのような要件が必要なのかをみていきましょう。
旅行業の種類をみてみましょう
旅行業等には、大きく6つの区分があります。その区分により登録要件も違います。
まずは旅行業等の種類と業務範囲を簡単にご紹介します。
旅行業等の種類
- 第1種旅行業(すべての旅行業務を取り扱えます)
- 第2種旅行業(海外の募集型企画旅行以外は取り扱えます)
- 第3種旅行業(近接市町村の募集型企画旅行、受注型企画旅行と手配旅行を取り扱えます)
- 地域限定旅行業(近接市町村に限定した旅行を取り扱えます)
- 旅行業者代理業(自分の所属する旅行業との旅行業者代理業業務委託契約の範囲内で業務を代理できます)
- 旅行サービス手配業(宿泊・運送サービスの手配、通訳案内の手配などを旅行業者のために行います)
旅行業の開業に必要な要件のポイント
① 申請者自身が旅行業法に定められた拒否事由に当たらないこと
② 財産的基礎がしっかりとしていること
③ 各営業所に旅行業務取扱管理者(常勤)を選任すること
旅行業法に定められた拒否事由とは?
旅行業法第六条には、申請者の拒否事由が定められています。次の事項に該当すると登録は拒否されます。
- 旅行業法に違反等により旅行業、旅行業者代理業や旅行サービス手配業の登録を取り消された者。
その取消しの日から五年を経過していない者 - 禁錮以上の刑に処せられ、又は旅行業法の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過していない者
- 暴力団員等
- 申請前五年以内に旅行業務又は旅行サービス手配業務に関し不正な行為をした者
- 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が①~④、⑦のいずれかに該当するもの
- 心身の故障により適切に業務を遂行することができない者又は破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない者
- 法人で、その役員のうちに①~④、⑥のいずれかに該当する者があるもの
- 暴力団員等がその事業活動を支配する者
- 旅行業者代理業を営もうとする者で、二以上の旅行業者の代理をしようとしているもの
財産的基礎の要件 -営業保証金(弁済業務保証金)と基準資産-
旅行業(第1種旅行業、第2種旅行業、第3種旅行業、地域限定旅行業)は区分により取扱範囲が異なります。その区分によって営業保証金(弁済業務保証分担金)と基準資産の額も変わってきます。
各区分における営業保証金の金額です。(新規登録時)※事業年度ごとに変わります。
※営業保証金の下の括弧内の金額は、弁済業務保証分担金です。
※営業保証金:旅行業者が旅行者からお預かりした旅行代金などを保護するために、一定額を供託します。旅行業者が倒産した場合など「旅行者を守る」ことが目的です。
※弁済業務負担金:旅行業協会(JATAやANTA)に加入をしている場合、営業保証金に代えて旅行業協会に納付します。(金額は営業保証金の5分の1です)
営業保証金か弁済業務保証分担金のどちらかを選択して供託又は納付します。
弁済業務保証分担金を選択した場合には、旅行業協会への加入が必須となります。
基準資産とは?
営業保証金の供託や弁済業務保証分担金の納付で、旅行業者にお金がなくなってしまっては、旅行の安全を担保することができません。ということで、営業保証金の供託や弁済業務保証分担金の納付したとしても財産的基礎がしっかりしていることを確認するために基準資産が設けられています。
※旅行業者代理業、旅行サービス手配業には財産的基礎の要件はありません。
基準資産の確認は、新規の登録の場合、会社設立時の貸借対照表上の数字を用いて「資産-負債-(営業保証金または弁済業務保証分担金)-(不良債権+繰延資産+営業権)」≧基準資産で行います。
例えば、第1種旅行業者の場合(金額はイメージしやすいように適当なものを入れています)
資産:1億円
負債:0円(通常、会社を新規設立した時点では取引自体が発生していないので負債はないです。)
営業保証金:7,000万円
不良債権・繰延資産・営業権:1,000万円(開業費(繰延資産))
資産:1億円 ー 負債:0円 ー (営業保証金:7,000万円)ー (繰延資産:1,000万円)となり
2,000万円となるので基準資産の3,000万円を下回ることになります
では、同じ条件で営業保証金ではなく弁済業務保証分担金の場合にしてみましょう。
資産:1億円
負債:0円(通常、会社を新規設立した時点では取引自体が発生していないので負債はないです。)
弁済業務保証分担金:1,400万円
不良債権・繰延資産・営業権:1,000万円(開業費(繰延資産))
資産:1億円 ー 負債:0円 ー (弁済業務保証分担金:1,400万円)ー (繰延資産:1,000万円)となり
7,600万円となるので基準資産の3,000万円を上回ることになります
旅行業務取扱管理者の選任の要件
旅行業者は営業所ごとに「旅行業務取扱管理者」を選任しなければなりません。
しかも
海外旅行を取り扱う場合には「総合旅行業務取扱管理者」の資格を持っている者、国内旅行のみであれば「国内旅行業務取扱管理者」の資格を持っているものを選任しなければなりません。地域限定であれば「地域限定旅行業務取扱管理者」の選任が必要です。
では、そもそも旅行業務取扱管理者とは何でしょうか?誰でもなれるものなのでしょうか?
旅行業務取扱管理者になるためには、国家試験(旅行業務取扱管理者試験)に合格する必要があります。合格し、一定の欠格事項に該当しない人のみ旅行業務取扱管理者として選任することができます。
旅行業務取扱管理者の業務
- 旅行に関する計画の作成に関する事項
- 旅行業務の取扱い料金の掲示に関する事項
- 旅行業約款の掲示及び備置きに関する事項
- 取引条件の説明に関する事項
- 契約書面の交付に関する事項
- 企画旅行の広告に関する事項
- 運送等サービスの確実な提供等、企画旅行の円滑な実施のための措置に関する事項
- 旅行に関する苦情の処理に関する事項
- 契約締結の年月日、契約の相手方その他の契約の内容に係る重要な事項についての明確の記録又は関係書類の保管に関する事項
- 取引の公正、旅行の安全及び旅行者の利便を確保するため必要な事項として観光庁長官が定める事項
登録の要件について説明しました。
登録にお困りの場合にはTOMOE行政書士オフィスにご相談ください。